千里浜なぎさドライブウェイ、羽咋出身の地元民の本音。砂浜は信じられないくらい痩せた
車で砂浜の波打ち際を走れる道路——千里浜なぎさドライブウェイは、県外から来た人がだいたい感動してくれるスポットだ。「え、砂浜を車で走れるの!?」と。
でも、私はここの近く、羽咋の出身だ。そのうえで正直に言うと、私はこの千里浜を「すごいスポットですよ、ぜひ!」と持ち上げる気には、あまりなれない。
理由はいくつかある。ひとつは、そもそも私が海をあまり好きじゃないこと。もうひとつは、地元の人間として、今の千里浜を見ていると、正直けっこう寂しい気持ちになるからだ。この記事は、そういう地元のちょっと屈折した本音も含めて、正直に書いてみたい。
そもそも千里浜なぎさドライブウェイって何なのか
先に基本だけ。千里浜なぎさドライブウェイは、羽咋市の千里浜町から宝達志水町の今浜まで、全長およそ8kmにわたって砂浜そのものを車で走れる道路だ。一般の車やバスでも海岸の波打ち際を走れるのは日本でここだけと言われている。
なぜ砂浜なのに沈まないのか。ここの砂の粒は0.25mm(4分の1ミリ)ほどで普通の砂浜の半分くらいしかなく、この細かい砂が海水を含むとぎゅっと固くしまって、舗装路のようになる。だからタイヤが埋まらない。自然がたまたま作った、天然の道路というわけだ。ここまでは観光ガイドどおりの話。
地元だけど、私は海があまり好きじゃない
まず前提として、私は子供の頃から海があまり好きじゃない。海に対して「汚い」というイメージがずっとあったし、体に砂や潮がついてニチャニチャする、あの感じがどうも苦手だった。それに、大声でワイワイ盛り上がるノリも昔からあまり得意じゃない。要するに、これは海がどうというより、完全に私の性格の問題だ。
同じ羽咋といっても、うちは海からそんなに近いわけでもなかったし、海水浴に入り浸るような子供でもなかった。だから「地元=海が大好き」みたいなイメージで見られると、正直ちょっと違う。とはいえ、まったく楽しい記憶がないわけでもなくて、若い頃には友達と何人かで浜でバーベキューをやったこともあった。あれはあれで普通に楽しかった。海そのものを憎んでいるわけじゃなくて、単に日常的に好んで行くタイプではない、という距離感だ。
ただ、これはたぶん少数派。海が好きな地元民は多い
ひとつ、フェアに書いておきたい。ここまで海に淡白なことばかり書いてきたけれど、私みたいな感覚は、たぶん羽咋では少数派だと思う。特に海に近い地区の人には、千里浜を好きで、大事に思っている人がたくさんいる印象がある。
実際、千里浜を盛り上げようと一生懸命な人たちがいる。たとえば砂で巨大な像を作る「砂像(サンドアート)」。道の駅のと千里浜には、その大きな砂像が通年で展示されていて、今は弁財天がモチーフになっている(以前は大黒天や毘沙門天だった)。ああいうものを作り続けるのは、相当な熱量がないとできない。夏には千里浜まつりのようなイベントもあって、地域として海を盛り上げていこうという動きは、ちゃんとある。
だから、ここから先に書く私の「あんまり行かないな」「寂しいな」という話は、あくまで一人の地元民のいち意見でしかない。千里浜を愛している地元の人も確かにいる、というのは、先に添えておきたかった。
正直に言う。砂浜は信じられないくらい痩せた
そんな私でも、はっきり言えることがひとつある。千里浜の砂浜は、信じられないくらい痩せた。
これは数字を出すまでもなく、見た目でわかる。私が若かった頃、子供だった頃の千里浜とは、もう全然違う。砂浜の幅がごっそり減っていて、正直「今でも車なんて通れるのか?」と思うくらいの勢いで細くなっている。
一応、裏付けになる話もある。1986年から2009年ごろにかけて、この海岸線は年平均で1mずつ後退し、場所によっては20mほど侵食された、という調査がある。原因は、手取川のダムや港の整備で川から海へ流れ着く砂の量が減っていること、それに加えて近年の高波や海面上昇。とくに日本海の冬は波が高く、季節風で砂がごっそり沖に持っていかれる。ある年の冬には、区間によって数百メートルにわたり砂浜が見えなくなった、なんてこともあった。
今、私が千里浜を走ることはもうない。ただ、能登里山海道を通るときに、車窓からあの砂浜が見える。その痩せてしまった海岸線を見るたびに、地元の人間として、けっこう寂しい思いをしている。子供の頃に見ていた景色は、もうそこにはない。
浜茶屋、実は高校のときバイトしてました
千里浜といえば、砂浜沿いに出る浜茶屋(浜焼きの茶店)も名物だ。サザエやハマグリ、イカなんかを焼いて食べさせてくれる、あれ。実は私、高校生の頃にその浜茶屋でアルバイトをしたことがある。
正直に言うと、地元の人間からすると浜茶屋には昔からちょっと「観光客相手の商売だな」という距離感がある。そして中で働いてみると、その印象は当たっていた。いかにも観光地、という感じの商売で、値段の付け方も含めて「ああ、こういう世界か」と、10代の自分でもわりとすぐに分かってしまった。地元の食材ですよ、という顔で出しているものが、実際どこまでそうなのか——そのあたりの“見え方と中身の距離”も、内側にいると薄々感じるところがあった。悪気というより、観光地の商売とはそういうものだ、という話だと思う。
ひとつ、今でも覚えているのは客引きだ。店の娘さんと、その友達の若い女の子が、通りかかる車に手を振って呼び込みをしていた。当時の自分からすると「かわいいお姉さんが呼び込みしてるなあ」というくらいの、のんきな記憶として残っている。いい思い出といえばいい思い出だ。
走るなら、羽咋側より宝達志水(今浜)側かも
これはあくまで私の印象なので軽く受け取ってほしいんだけど、砂浜の痩せ方には場所によってムラがある。羽咋の千里浜町側よりも、南側の宝達志水町(旧・押水のあたり/今浜側)のほうが、まだ砂浜が残っていて走りやすいんじゃないかな、という気がしている。私自身はもう走らないので確かなことは言えないけれど、行くならそのあたりの状況も気にしてみるといいと思う。
そして、これは大事なこと。千里浜は天然の砂浜を走らせているので、波が高い日・強風・雨で砂がゆるむ日は通行止めになる。近年は規制がかかる日数も増えている。わざわざ目当てに行くなら、出かける前に「石川みち情報ネット」など石川県の道路規制情報で、その日走れるかを確認してから行くのを強くおすすめする。遠くから来て閉まってた、がいちばん切ないので。
あと、走れる日でも波打ち際ギリギリや、ゆるそうな砂の上に突っ込むと普通にスタックする。走るなら、他の車が通っているしっかりした砂の筋を選ぶのが無難だ。
まとめ:期待しすぎず、気になるなら一度は
ここまで正直に書いてきたとおり、私は千里浜を手放しでおすすめする気にはなれない。海はもともと得意じゃないし、砂浜はすっかり痩せてしまって、走ることももうない。能登里山海道から眺めては、少し寂しく思っているくらいだ。
それでも——車で砂浜を走れるというのは、冷静に考えればやっぱり日本でここだけの体験ではある。だから、期待しすぎない前提でなら、気になっている人は一度行ってみるのもいいと思う。ただし、私が子供の頃に見ていたような広い砂浜を想像していくと、たぶん「あれ、こんなに細いのか」となる。その現実込みで見てもらえたら、それがいちばん今の千里浜だ。
このサイトでは、これからもこういう「観光ガイドには載らない、石川で普通に暮らしてる人間のリアル」を、良くも悪くも正直に書いていきたい。
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